もし、あなたの人生に悪影響を与えている思考や感情、思い込みを緩めることができたらいかがでしょうか?
例えば、以下のようなものです。
- 自信のなさ、自己評価の低さ、自己否定、ネガティブな感情
- 上手くいかない、どうせ自分なんか……などの思い込み
- 恐れや不安
- ストレスやブレーキになっているストレスや記憶
- トラウマ など
こうした状態を、あなたにとってプラスに変えられるのが、「EMDR(眼球運動による脱感作および再処理法)」という心理療法であり、EMDRで使われている「両側性刺激(BLS)」です。
自分に悪影響を与える記憶やイメージを思い浮かべたり、ネガティブな感情を感じながら、目を左右に動かす。というシンプルなアプローチなのに効果があります。
そのため、WHO(世界保健機関)が発表した「トラウマ後のメンタルヘルスケアに関するガイドライン」で、EMDRを推奨するほど。仕事や人生で成果を出すための有効なツールとして、お役立てください。
- EMDRについて
- EMDRの効果|実践するメリット
- WHO(世界保健機関)に推奨されている
- EMDRが効果的な理由
- 両側性刺激(BLS)による変化のメカニズム
- EMDRの進め方8つのステップ
- EMDRをより効果的に使うポイント‐「現状の外」にあるゴール設定
これから紹介する内容があなたの心に響き、人生がより前に進むきっかけになれば嬉しく思います。
EMDRとは
EMDR(Eye Movement Desensitization and Reprocessing)は心理療法の一つで、眼球運動による脱感作と再処理法のことです。1980年代後半に、アメリカの心理学者フランシーヌ・シャピロ博士によって開発され、トラウマ(PTSD・心的外傷後ストレス障害)で苦しむ人々の回復をサポートしてきました。
初期のEMDRはシンプルで、セラピストの誘導に合わせて眼球を左右に動かすというものです。動かすことで起こる刺激(両側性刺激と呼びます)が、記憶の再処理を促し、トラウマ記憶に伴う苦痛を和らげてくれるのです。
その後、聴覚や触覚を使った刺激も有効だとわかり、「両側性刺激(BLS)」という形で、視覚・聴覚・触覚を刺激するものに変わりました。
EMDRの効果|実践するメリット
EMDRの効果や実践するメリットは、トラウマ記憶の再処理を促し、心理的な負担を和らげることです。
このようにトラウマ記憶による心理的・感情的・身体的な反応を軽減することを脱感作と呼びます。効果や成果が出るまでの期間に個人差はありますが、短期間で効果が見られる点が特徴です。
トラウマ以外にも、以下のように幅広く心の悩みや問題に活用できます。
- 不安障害
- パニック発作
- 恐怖症
- うつ病
- 悲嘆
- 依存症
- パフォーマンス不安
- ストレス関連
あるいは以下を緩めたり、変化させられると言うこともできます。
- 成果を妨げるネガティブな思考
- パフォーマンスを下げる感情
- 自分の中に苦しみを生み出す状態
- ポテンシャルを抑え込む無意識のパターン
- 記憶がもたらすストレス など
EMDRの信頼性|国際的な保健機関・WHO(世界保健機関)に推奨されている

EMDRは、セラピーの現場で成果を出しているだけではなく、国際的な保健機関である「WHO(世界保健機関)」が有用性を認めています。そのことからも、信頼できる内容だと言えるでしょう。
具体的には、2013年に発表した「トラウマ後のメンタルヘルスケアに関するガイドライン」で、トラウマに苦しむ人々への治療法として推奨し、
2024年には「トラウマの効果的な治療として最もエビデンスのある心理的介入」として紹介しています。
PTSD の有効な治療として最もエビデンスのある心理的介入は、トラウマに焦点を当てた認知行動療法と眼球運動による脱感作および再処理法 (EMDR) に基づくものです。
(原文)
The psychological interventions with the most evidence for effective treatment of PTSD are those based on cognitive behavioural therapy with a trauma focus and eye movement desensitization and reprocessing (EMDR).※引用元:Post-traumatic stress disorder|World Health Organization (WHO)
EMDRが効果的な理由
EMDRが効果的な理由は、トラウマ記憶の再処理を促す点にあります。
EMDRが始まった1980年代後半、開発者のフランシーヌ・シャピロ博士が注目したのは、「眼球を左右に動かす運動が、不快な記憶による精神的・身体的な苦痛を軽減させる」という現象でした。そのため、当時は、「EMD(Eye Movement Desensitization)」と呼んでいました。
その後、左右交互の刺激は、聴覚・触覚への刺激でも、眼球運動と同様の効果を持つことがわかったのです。そのため「両側性刺激(BLS:Bilateral Stimulation)」と呼ばれるようになったのです。
両側性刺激は、体の右側と左側を、交互にリズミカルに刺激する方法です。
- 視覚刺激:セラピストが左右に動かす指を目で追うことで、眼球を左右に動かして刺激します。
- 聴覚刺激:ヘッドフォンから、左右交互に聞こえてくる音を聞き、聴覚を刺激します。
- 触覚刺激:セラピストが、膝や手の甲を左右交互に軽く叩くのを感じることで、触覚を刺激します。
両側性刺激(BLS)による変化のメカニズム
両側性刺激(BLS)による変化のメカニズムは、トラウマ記憶の処理・BLSによる記憶の再処理における変化の流れをみるとイメージしやすくなります。
- トラウマ体験の記憶:体験による感情や身体感覚が、否定的な自己認識と結びつく
- トラウマ記憶の凍結:脳内で「凍結」されたような状態で保存されることがあり、人生に悪影響を与える
- 記憶の再処理を促す:EMDRによる両側刺激(BLS)で、再処理を促す
- 再処理:再処理により、凍結された記憶にアクセスし、記憶を他の経験や知識と結びつける
- 意味付けの変化:再処理により「過去の出来事」として客観的に見れるようになる。その結果、感情的・身体的な苦しみが和らぐ
- 肯定的な認識の強化:「私は乗り越えた」「今は安全だ」などの肯定的な自己認識が生まれる
注意:BLSによる再処理によって、トラウマ記憶に紐づく認知や感情が変化しますが、記憶自体が消えるわけではありません。
EMDRの進め方8つのステップ
EMDRを自分で実践する方法を紹介します。
使いやすいように、正式なやり方を少し調整しています。
ステップ | 内容 |
---|---|
1.変化させたい状態を決める | 「変化させたい状態(どのような記憶、思考、感情、思い込みを扱いたいか?)」を決めましょう。 例.父に怒鳴られ、暴力を振るわれたときの記憶、恐れ、戸惑い、体の緊張 |
2.どのような影響があるかを確認する | 変化させたい状態は、人生にどのような影響を与えているか?を振り返りましょう。 例.権威のある男性、体育会計の人を前にすると緊張し、萎縮する。その結果、仕事のパフォーマンスが落ちる |
3.望ましい状態を決める | 変化させたい状態の変わりに、手に入れたい「望ましい状態(自分や周囲にとって望ましい状態)」を決めましょう。 例.誰を目の前にしても、リラックスしてコミュニケーションを取れて、最高のパフォーマンスを発揮できる状態。それは仲間、上司、取引先にもコミュニケーション面、パフォーマンス面でプラスになる |
4.変化させたい状態を数値化する | 変化させたい状態をイメージして以下を確認しましょう。 ・感情的な苦しみや辛さは10段階中どれくらいか? ・身体に反応がある場合は10段階中どれくらいか? 例.感情面:10段階中8、身体の反応は胸のあたりにもやもや:10段階中7 |
5.変化させたい状態に両側性刺激(BLS)を行う | ステップ1で決めたテーマを思い浮かべながら両側性刺激(BLS)を行いましょう。 |
6.望ましい状態に両側性刺激(BLS)を行う | ステップ3で決めた望ましい状態を思い浮かべながら両側性刺激(BLS)を行いましょう。 |
7.変化を確認しながら、BLSを繰り返す | 変化させたい状態をイメージして以下を確認しましょう。 ・内面や身体に嫌な状態がないか? ・10段階中どれくらいか? |
8.変化させたい状態が軽減されるまで繰り返す | 変化させたい状態が軽減されるまで、ステップ4、5を行いましょう。 ※同じ日に行うのでもいいですが、日々、積み重ねる形がおすすめです。 |
※慣れないうちはトラウマを扱うのはやめましょう。強い感情に飲み込まれる可能性があるので、自分一人ではなく、プロに協力してもらうことが大事です。
EMDRをより効果的に使うポイント‐「現状の外」にあるゴール設定
EMDRをより効果的に使うポイントは「現状の外」にゴール設定することです。
現状の外にゴール設定することで、問題や目標に対して「現状の自分ありき」ではなく、「今の自分のレベルを大きく超える新しいアイデア・思考・行動」を生み出せるようになります。
※強いトラウマに苦しんでいる場合は、ゴール設定するよりも先に自分の状態を整えることが大事です。まずはトラウマ治療の専門家に相談しましょう。
ゴール設定で「新しい視点」と「エネルギー」を生み出す
ゴール設定とは、以下の図にある「B地点(自分にとって望ましい状態)」を設定することです。
目標設定との違いは、「現状の外側にあるゴール(現状の延長線上で手に入るゴールではなく、想像もつかない大きなもの)」を設定することです。

その結果、「現状の自分ありきの最適解」ではなく、「今の自分のレベルを大きく超える新しいアイデア・思考・行動」を生み出せるようになります。
なお、ゴール設定は「現状の外側」を含めた3つのポイントを含めたものです。
- やりたいこと(want to)である:心からやりたいことである
- 現状の外である:現状の延長線上で手に入るゴールではなく、今の自分じゃとうてい達成できないことをゴール設定する
- バランスホイール満遍なくで設定する:仕事だけ、お金だけ、家庭だけ。などではなく、各領域で満遍なくゴールを設定しましょう
ゴール設定に関しては、こちらの動画がシンプルでわかりやすいと思います。
1つ目:やりたいこと
やりたいことゴールに設定しましょう。できるかできないかではなく、やりたいかやりたくないかが重要です。
2つ目:現状の外
今の自分じゃとうてい達成できないことをゴール設定しましょう。自分が変わらないと達成できないようなゴールが、ゴールを達成するためのエネルギーを生み出します。
3つ目:バランスホイール満遍なく
満遍ないゴールは様々な側面から設定をしましょう。仕事だけ、家庭だけではなく、各領域で満遍なくゴールを設定しましょう。
あなたにとって、家族や大切な人、周囲や関わる人にとって、ベストな未来のためにお役立てください。